いつ逃げ癖がついてしまったのだろう?
皆さんは逃げ癖がありますでしょうか?
知らないもの・初めてなもの・不安なことなどに対して用心深くなってしまい、逃げ出してしまうのが逃げ癖です。
もし皆さんが逃げ癖があるのであれば、何かしらの原因があって逃げ癖がついてしまったと思っていませんか?
例
- いじめられてから逃げ癖がついてしまった
- ブラック企業に就職してしまって逃げ癖がついてしまった
ですが、本当にこのような事が原因で逃げ癖がついてしまうのでしょうか?
今回は、このような逃げ癖になってしまう性格は、いつ決まってしまうのか?ということを調べた研究がありますので、そちらの方をご紹介していきたいと思います。
では、早速ですが本題に入っていきたいと思います。
逃げ癖についての研究
アメリカのメリーランド大学などが行った研究になります。
研究の参加者たちの人生を何十年にわたって追って、逃げ癖、つまり「抑制傾向」というものを調べるという研究を行いました。
抑制傾向とは?
抑制傾向とは、よく知らないことに対して用心深くになりすぎてしまったり、現実逃避や逃げたりしてしまうという行動をとりやすい性格です。
具体的に言いますと、産まれてから14ヶ月の時・15歳・26歳の3つのポイントで参加者全員の抑制傾向を調べるということを行い、どのタイミングで抑制傾向がついているのかを調べました。
研究の対象になった男女は、全員で165人です。
この165人の男女を20年以上に渡って調べたのです。
過去の研究を見てみますと、抑制的な行動を示す子供というのは、大人になってから不安障害や、大人不安などになってしまうケースが結構多いのです。
ですのでこのような人は、子供の頃に抑制的な行動を取りがちな子供だった可能性もあるのです。
抑制傾向の決定時期
では、本題の研究の結果ですが、逃げ癖である抑制傾向はどのタイミングで決まるのでしょうか?
ですので皆さんが「いじめられたから」とか、「ブラック企業に就職してしまったから」という理由で逃げ癖がついてしまったと思っている人は、間違っているのです。
もちろん性格ですので成長していくうちに変わる可能性はあるのですが、基本的には産まれた時に内向的な人は、大人になってからも内向的で、かつ抑制傾向が出やすいのです。
つまり、赤ちゃんの頃から抑制的な性格だった人というのは、恋愛の経験数は低くなってしまい、家族や友人とかとも一定の距離をおいた付き合いをするのですが、その分、物事に集中する時間や、自分の頭で考える能力が高まることによって、本来は人間関係などで得られることを、自分の内面の力だけによって成功に結びついていているのです。
この研究では別のテストも行なっており、参加者のエラー関連ネガティブ度というのを測っています。
エラー関連ネガティブ度とは?
エラー関連ネガティブ度とは、「自分のミスをどれだけ気にするのか」という性格のことです。
ただ良いこともわかっており、犯罪や、衝動的な行動による問題などを起こす事がないのです。
考え込みすぎてしまうことによって、不安に関連した問題や心配というのは起きやすいのですが、犯罪に手を染めてしまう確率が少ないのです。
心配性の人は反芻しても問題は解決しない
誰もが時々、シナリオを頭の中で何度も繰り返すことがあります。
問題は、このような繰り返しの、時にはコントロールできないような考えは、必然的に気分を悪くし、うつ病になりやすくなるということです。
では、なぜ人は反芻するのでしょうか?
反芻とは?
反芻とは、何度もネガティブな出来事を思い出し、悩み続けて抑うつ気分を増長させる考え方のことです。
悲しいとき、動揺しているとき、自分の問題を考えようとするのは合理的なことのように思えます。
しかし、人生の問題の中には解決できないものもあり、人は試行錯誤している状態なので、必ずしもうまくいくとは限りません。
そして、もし気分が良くならなければ、それは気分が良くなるまで反芻を続けるべきだというシグナルだと考えます。
残念ながら、この2つの変数の間の因果関係の方向性を決定することはできません。
なぜなら、一方を操作して他方に影響を与えるかどうかを確認することは難しいからです。
つまり、問題解決がうまくいかないと試行錯誤のループに陥ってしまうのか、それとも反芻的でループ的な思考スタイルが問題解決の能力を損なうのかはわかりません。
反芻する傾向は、髪の毛の色や身長の違いと同様に、脳の物理的な違いからくる個人差かもしれません。
背外側前頭葉皮質には、反芻を説明する上で特に重要な認知プロセスである実行機能があります。
実行機能とは?
実行機能とは、その名の通り、より具体的な神経プロセスの働きやパフォーマンスを組織化し、指揮する監督者のことです。
より具体的なプロセスには、注意、ワーキングメモリ(使用中に記憶に留めておけるもの)、セットシフティング(異なるタスク間を移動する能力)、インヒビション(タスクに関係のない情報を無視する能力)などがあります。
反芻の性質を考えると、これらのプロセスと直感的に関連しているように思えます。
反復思考のループに陥ると、その思考を止めて別の場所に注意を向けることができなくなります。
反芻しやすい人は、これらの能力に差があることが研究で実証されていますが、やはり因果関係の方向性を示すことはできませんでした。
反芻という行動が実行機能を阻害しているか、実行機能がうまく働かないことが反芻の舞台となっているのかもしれません。
研究者は、因果関係の方向性を探るための実験を計画しています。
一つの方法は、反芻のプロセスを実験的に誘発することです。
これは、参加者の半数を反芻条件に割り当て、コンピュータの画面に表示される一連の繰り返し文を読ませるというものです。
残りの半数の被験者は、一連の単一の文を読む対照条件に割り当てられます。
これらの文は感情を伴わないものです(例えば「船は海を渡る」など)。
つまり、繰り返される反復的なプロセスだけで、注意力が損なわれているのです。
興味深いことに、有意な差を示した2つのグループは、気分の変化がないニュートラルなグループです。
繰り返しの文を見た参加者は、ネガティブな気分がない場合でも、連続した文を見た参加者よりも、注意のエラーを起こしやすいのです。
現在進行中の別のプロジェクトでは、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を用いて実行機能を操作し、反芻への影響を測定しています。
tDCSの優れた点は、神経構造を興奮させたり抑制したりできることです。
つまり、1人の被験者に3つの条件(興奮、抑制、無刺激のコントロール)を与えて、その人の変化を調べることができるのです。
背外側前頭前野を興奮させれば、理論的には実行機能が高まり、注意力や抑制力が向上し、反芻を抑えることができるはずです。
一方、背外側前頭前野を抑制すれば、その逆の結果になるはずです。
これらの2つの研究プログラムによって、因果関係の方向性を調べることができます。
しかし、反芻を止めるにはどうすればよいかはわかりません。
アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、逆説的に反芻を増大させる思考の抑制と反発のサイクルを断ち切ることができるので、役に立つかもしれないという指摘があります。
反芻する思考を受け入れつつ、その内容に対処する(ネガティブなものを減らし、ポジティブなものを増やす)ことを学ぶことは、最も効果的な行動と言えるかもしれません。
神経構造の生まれつきの個人差によって、反芻しやすい人がいる場合は、特にそうです。
背の低い人が踏み台を使って上の棚にたどり着くように、反芻する傾向のある人は、反芻を完全に止めようと努力するのではなく、反芻の影響を減らすための適応策を身につける必要があるかもしれません。
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