お肉が好きでよく食べるけれど、食べ過ぎが心配だな。
多くの人が好きであろう「肉」。
近年では「動物の命を人間のために奪うべきではない」といった思想や、「肉を食べることは健康に悪い」といった考えから、宗教以外の理由で菜食主義を選択する人々が増えています。
確かに「肉よりも野菜の方が健康にいい」というイメージはありますが、実際にはどうなのでしょうか?
アメリカのチームが行った研究では、「菜食主義者は肉を食べる人と比較して、精神的な問題を抱えている可能性が高い」という結果が明らかとなりました。
ですので今回は、その研究についてご紹介していきたいと思います。
では、早速ですが本題に入っていきたいと思います。
肉と健康に関する過去の研究
古代から食事の選択は社会的階層や配偶者の選択における強い指標となってきました。
結果として、「私たちが食べるもの」および「どのように食べるのか」は、私たちのアイデンティティに不可欠な要素となり、生理学的・社会的・心理学的経路を通じて私たちの健康に直接影響します。
研究チームは、以前に実施された18件もの「肉の消費と心理的健康に関する研究」について調査を実施しました。
心理的健康に着目する上で、うつ病・不安・自傷行為・自覚しているストレス・生活の質といった要素に絞り込んで、1997年~2019年に発表された過去の研究を調査しました。
18件の研究はそれぞれ調査の厳密さやバイアスに違いがあったそうですが、合計で14万9559人の「肉を食べる人」および8584人の「菜食主義者」という膨大な被験者を含んでおり、研究が行われた地域はヨーロッパ・北アメリカ・アジア・オセアニアといった広範囲にわたっていました。
その一方で、ストレスに着目した4件の研究や生活の質に着目した2件の研究では、肉を食べる人と菜食主義者の間で有意な差は見られなかったとのことです。
今回調査された18件の研究のうち、16件はある時点における集団の状態を評価する横断研究であり、集団を一定期間にわたって調査した縦断研究は1件に過ぎず、もう1件はランダム化比較試験(評価のバイアスを避け、客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法)を行った研究でした。
ランダム化比較試験では菜食主義者が肉や魚を食べた人と比較して気分がいいと報告しましたが、縦断研究では菜食主義がうつ病や不安の予測因子であることが示されたとのことです。
しかし、これらの一連の結果だけですと、肉を避けることと精神的な問題の因果関係を特定することはできません。
ですが、相関関係は因果関係を示すものではなく、今回の結果についていくつかの説明を付けることができます。
今回の結果について
たとえば、
- 精神疾患に苦しんでいる人は自己治療の一種として食事内容を変えることがある
- 厳格な菜食主義者の食事は、栄養素の欠乏を引き起こして精神疾患のリスクを増加させる
- 摂食障害を抱えている人は、自身の障害を隠すために菜食主義を利用している
- 動物の苦痛に対して非常に敏感だったり動物の苦しみに注目していたりする人は、うつ病や不安の両方を抱えやすい
といった可能性があります。
ベジタリアンは脳卒中のリスクが高くなる
イギリスのオックスフォード大学公衆衛生学部の研究チームが行う自国のベジタリアンを主な対象とした栄養・健康に関する調査である「EPIC-Oxford」のデータを使用したもので、研究チームは平均年齢45歳の4万8188人の18年間にわたる調査データから、非ベジタリアンとベジタリアンの脳卒中の可能性を計測しました。
今回の論文の筆頭著者であるオックスフォード大学公衆衛生学部の栄養疫学者Tammy Tong(タミー・トン)さんは、脳卒中と虚血性心疾患のリスクに差が生じる詳しい原因は不明だとしつつも、「コレステロール値と一部の栄養素の不足が原因ではないか」と推測しています。
ビタミンB12などが不足していたり、血中のコレステロール値が極端に低かったりする場合には出血性脳卒中のリスクが高まるという研究結果が複数報告されているとのことです。
「ベジタリアンは脳卒中のリスクが高いが虚血性心疾患のリスクは低い」という研究結果に対して、通常では脳卒中に比べて虚血性心疾患の発症率は高くなるため、トータルで考えるとベジタリアンのほうが死亡リスクが低く健康的です。
しかし、ベジタリアンになればあらゆる病気のリスクが下がるというのは誤解でしょう。
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